ショスタコーヴィチ : 交響曲 第5番
>> 素晴らしい!
このレビューを書いているのはクリスマス・イブです。よって込み入った話は抜きにします(笑)。
わたしがこの盤の演奏をきいたのは学生時代。もう30年前でしょうか。つよく、ひきつけられました。バーンスタインがこの演奏をしたのは1959年。ニューヨーク・フィルハーモニックもこの頃は素晴らしい機動力を誇っていました。その後「白熱のライヴ」と銘打って日本におけるライヴ録音が発売されました。けれど、残念ながらオーケストラの力はかなり、おちていました。ミトロプーロスが築き上げた財産を、バーンスタインは10年で使い果たしてしまったようです。これは余談ですが日本公演の録音はすくなくともひとつの楽章、もしかしたら全楽章が別テイクだ、という噂があります。まあそれはわたしにはどっちでもいいですが。
この1959年盤におけるバーンスタイン(とニューヨーク・フィルハーモニック)の演奏は徹底的なまでに「煽る」演奏です。第三楽章の、ちょっと恐怖感を抱くほどの「静けさ」から第四楽章へ移る際の「爆発」は、比肩するものなし。そもそもが「こんなに速くて大丈夫だろうか」と思っているところに、さらにもう一段階アッチェランドがかかって、それで崩れない! ここまで完璧にやられれば、もう降参するより仕方ありません(笑)。
バーンスタインを愛するききては彼がどういう感覚の持ち主であったか、よくご存知でしょう。この盤にこそ彼の出発点があったと、わたしは思います。
>> 第5番の魅力をストレートに表現した、バーンスタイン若き日の名演奏
1980年代に日本に巻き起こったマーラー・ブームのさなか、「マーラーの次はショスタコーヴィチ」と、まことしやかに語られていた時期があったのだが、その後、現在に至るまで、ショスタコーヴィチの15曲の交響曲のうちで、定番曲として定着したのは、この第5番と第10番くらいだろう。
私も、ショスタコーヴィチの曲にまつわる政治臭と、現代曲特有のとっつきにくさから、ショスタコーヴィチの交響曲のほとんどは聴く気がしないのだが、第5番と第10番、特に、第5番は、古典派やロマン派の名交響曲と比較しても全く遜色のない名交響曲だと思う。
バーンスタインのショスタコーヴィチの交響曲は、昔から名盤として定評があり、この第5番も、いずれもニューヨーク・フィルを指揮した1959年録音のこの旧盤と、1979年の東京文化会館でのライヴ演奏を収録した新盤とも、評論家諸氏の極めて高い評価を得ている。
20年もの年月を経たこの二つの演奏の間には、とても同じ指揮者による演奏とは思えないほどの大きな違いがあるのだが、私は、断然、この旧盤の方を取りたい。スタジオ録音盤とライヴ盤を比較した場合、通常は、ライヴ盤の方が白熱した演奏になると相場が決まっているのだが、この二つの演奏に限っては、全く逆なのだ。新盤演奏当時は、まだ、バーンスタインの晩年という時期ではないのだが、新盤の演奏には、明らかに晩年の特徴が出ており、極めてテンポが遅く、表現に深みはあるのだが、暗く、内省的で、躍動感がないのだ。それに対し、旧盤は、新盤より3分30秒以上も速いテンポで、ストレートにこの曲の魅力を表現しており、新盤よりメリハリ豊かで、特に、第1楽章や第4楽章の熱気溢れる圧倒的迫力では、完全に新盤を上回っている。例のボルコフの証言は、この曲へのアプローチにはさほど影響しないともいわれており、私は、旧盤で、素直に、この曲の魅力に浸りたいと思う。
>> 魂の壮絶なる演奏
最近テレビドラマの中で流れて注目が集まったこの「交響曲第5番」は、20世紀を代表する作曲家ショスタコーヴィチの最も有名な交響曲です。
バーンスタイン指揮の同曲は他に1979年のライブ録音が有名ですが、この1959年の演奏は「抑圧の克服から勝利へ」というテーマにバーンスタインの魂がより融合した壮絶な演奏となっています。
東京文化会館で行われた1973年5月26日のムラヴィンスキー指揮/レニングラード・フィル(ALTUS盤)、1981年5月にロンドンで録音されたハイティンク指揮/コンセルトヘボウ(DECCA盤)の演奏と共に私のクラシック人生の宝物です。
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