バッハ:小プレリュードと小フーガ集
>> 芸術になった練習曲集
この曲集とほぼ同じ内容のCDは、現在手に入るものではグールド以外にニコラーエワのものしかありません。聞き比べるとその違いがよくわかる、というより同じ楽譜を同じピアノで弾いてもこんなに差があるものかと驚かされます。もちろん聞き手の好みがあるので、どちらがいいかと断言するのは無理で、どちらもお聞きになることをおすすめします。特にあなたがピアノを弾く場合には。
グールドは二声のメヌエットやフーガのように音符の少ない曲はむしろゆっくり、そしてどちらかと言えばスタカート気味に弾き、ピアノを通してつぶやいているような不思議な雰囲気を作り出します。一方三声、四声のように音符の多い曲は、逆にきわめて急速に弾いています。そうすることで、普段は目立たない隠れたメロディーがはっきり浮かび上がってくる独特の効果があります。
確かに練習曲ではあるのですが、こういうふうに弾いたら多分ピアノの先生には怒られ、コンクールにも通らないでしょう。ですが、天国のバッハはむしろニコラーエワよりグールドに良い点数をくれる気がします。ピアノ芸術の一つの極限の形として、ぜひ一度はお聞き下さい。
>> ピュアな中に茶目っ気のある演奏
ピアノの音がひたすらきれい。スタジオの違いや曲調にもよるのでしょうが、角が取れて澄んだ音の玉が舞っているようです。
グールドにしてはテンポを抑えぎみで、スタッカートを随所に取り入れながらの演奏は茶目っ気たっぷり。スローな単調の曲も、深刻にならないように節度が守られていて、心地よく響きます。
きっと幼少の頃を思い出しながら、そして、後世の子供たちが聴くことも考慮して弾いたのではないでしょうか。
ステレオタイプと言われるのを承知で書けば、私はこの演奏に(グールドが嫌いだった)モーツァルト的なものを感じました。
この調子で再びモーツァルトのピアノソナタを弾いてくれていたら・・・と叶わぬことを期待してしまいます。
純粋比較できませんが、個人的には最晩年のゴールドベルクよりも好きなアルバムです。
特に、リラックスしたい人やBGMにおすすめします。
>> 未来ある子供たちの練習曲集
廃墟らしき建物の中に独りたたずむグールドの姿がやたらと印象的なジャケットのこのCD。
当時大学生だった頃に初めて聴いた記憶があります。
あれから年数を経た今になり改めて聴き返してみると、
やはりすばらしいアルバムであると再認識できます。
自由な空気に充ち溢れた一音一音は躍動感にあふれ、
疲れ切った身も心も洗い流してくれる様です。
力の抜きどころやテンポのとり方など、すべてが勉強になります。
この録音の2〜3年後に他界したとは到底想像もできない演奏内容です。
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